【必読】令和6年度・信州大医学部推薦全国募集枠が登場!
信州大学医学部医学科
地域枠推薦入試は全国の受験生におすすめ!
医師である父とわが子のための備忘録 Ver1.6

・令和6年度(2024年度)募集分から信州大学医学部医学科推薦入試で全国募集地域枠が開始される
・22名(現役または1浪)募集

NEW 信州大学 令和6年度学生募集要項(学校推薦型選抜_医学部医学科)

信州大学 令和6年度入学者選抜要項(本文9ページ目を参照)

Disclaimer: 以下の言説は当方武蔵丸の主観的な意見開陳に過ぎないのでその正確性、無謬性は一切保障いたしません.「世の中にはこんな見方もあるのだな」という距離を置いた傍観者の姿勢でご覧になり、ご自身の思考のたたき台としてください.すべての判断は自己責任でお願いいたします.

この全国募集地域枠を県外からの出願者の立場で考察してみる
単体で考察するとわかりにくいので所々で新潟大学の全国枠推薦と比較


とりあえず
推薦入試は信州大学を受けておいて、
合格すれば必ず入学し、
不合格ならば一般前期/後期で従前どおりの志望校を受験する
…というプロセスで何ら不都合なし


以下に利点を列挙してみる

(1)小論文がない

(2)10分程度のごく標準的個人面接(時間がなさすぎて天才系は自身の卓越性をアピールできない(筑波とかに行ってください)からIQ115前後の地味努力系が集まる)

⇒前回までの面接試験は個人面接(学生1名 vs 面接官3名)で10分程度.次回もおそらく同じだと思うが自身で要確認.

⇒おそらく訊かれること:修学資金制度について完全に理解しているか、県内へき地での義務的勤務(3~4年)について理解していて意気込みがあるかどうか.

⇒推薦入試で共テ得点が高ければ信州大に合格し、不合格ならば一般前期入試での勝負になり、
共テの比重が低い国公立大学を受験することだろう.はたしてこの共テ得点の比重の低い大学の一つがやはり信州大なのである(共テ:二次の得点比率が3:4).推薦入試で一度信州大を受けておけば、出願書類も使いまわしができるし、受験地も二度目の訪問となるから下見不要だ.特に前回と同じ大学の雰囲気の中で行われる面接(前期は集団面接)は精神的にかなり楽になるはずだ.信州大についての知識や愛着も一段と増しているだろうから、それがよどみのない応答ぶりや表情に表れて試験官にかなりの好印象を与えることだろう.

(3)推薦も一般入試と同様、露骨な地元優遇や男性優位などのバイアスがないホワイト入試であるはず(高緯度地域とは違う)

(4)面接と提出書類が並レベル(注意:あくまで医学部医学科受験における「並レベル」)ならばあとは共通テスト得点だけで合格させてくれるはず

⇒評定値4.3も4.6も出願基準を満たしていれば関係なし.単なる閾値.有意な違いが出てくるのは最後の22人目を争う2名が5点差で伯仲していて、共テで負けている方の受験生が評定値4.9であるために逆転勝利裁定をもらう時くらいだろう(かなり想像が入る).

(5)12月中旬にある防衛医科大2次試験面接の練習台としても使える

(6)余裕派の人は信州への家族旅行に組み込んで物見遊山気分で受験できる(むしろこういう時のほうが弁舌が滑らかになる)

(7) 県外生については: 信州大学は全国の各高校から1名のみ推薦可⇔新潟大学は各高校から20名から30名を推薦可.
 よって新潟大学は上位校による寡占が十分起こりうるが、信州大学ならば上位校にすべてを奪われる心配なし.偏差値65前後の高校の受験生(特に共テ猛者)にも合格の可能性十分あり.ぜひ大金星を上げてもらいたい.

⇒偏差値上位高校では各校1名枠をめぐる小さなバトルがあるだろうが、
二番手校以下では黙秘していれば校内選考で不戦勝.また、特に長野県から離れた高校では信州大学は話題や意識にまず上らないであろうから、たとえ超上位校であっても校内選考が無風で通過する公算大.全国から各校1名のみ募集としたことで広く浅く、それも高校偏差値のシーリングの下に埋れた有用人材の登用ができるようになっているのが面白い.こうなることを見越して募集案を作ったのならば担当者はかなり頭がよい.

(8) この地域枠は
長野県内からの応募については「各校から10名まで推薦可」となっている.これを見て一瞬絶望感がよぎるが、しかし、よく考えるとあくまでもこれは「長野県内の高校」についての話である.強豪がひしめく東京都や大阪府の話ではないのだ.思うに、1校あたりの応募可能人数を県内:県外で10:1の比率にしたのは長野県の高校レベルが他県から著しく乖離している現状(クリック)を関係者が憂慮しているからなのかもしれない.さらなる判断は各人にお任せする.がん治療に例えて言えば、他県受験生がCD8キラーT細胞ならばいかに分厚い敵陣であっても容易に中央突破できるだろう、ということだ.

⇒長野県内に対しては13名分の県内枠があるので全国地域枠22名は県外受験生に完全独占されても構わないとのこと.
この県内枠13名分が長野県内の最高得点組を程よく吸い取ってくれる.賢者ならば全国勢との危険極まりない直接対決は避けたいから県内13名枠を第一希望とするだろう.また、長野県医学生修学資金(1440万円)は例年入学後にも改めて募集しているので長野県人が「奨学金付きの地域枠」をあえて第一希望とすることは著しく合理性を欠く.よって全国枠22名をめぐって全国勢と対峙する長野県勢は県内枠(第一希望)からはじかれたもはや高得点組がいない集団であると考えられる.全国勢にとって実に与しやすい相手である.

(9)
もしかしてこれが最大の利点か⁉: 合格すると付随契約として自動的に1440万円が貸与される(国公立大学地域枠奨学金としては国内最高額レベル).9年間の県内勤務義務を果たせば返済が全額免除され所得税もかからない.⇔新潟は同じく9年間ほぼ同じ内容の義務を課されるが1080万円しか貸与されない.公的奨学金貸与というと、こき使われるイメージがあるが今は働き方改革の制約やハラスメント撲滅、人権擁護の風潮もあるので平成期にくらべてかなり丁重な扱いとなっている.まあ安心してよい.
⇒ごく普通の初期研修病院の中には700~800万円の年収になるところもちらほらある.

⇒義務的勤務9年の内訳は:
①初期研修2年 信州大(たすきがけ研修可能)や長野赤十字病院など
②専門医研修3~4年 相澤病院諏訪中央病院などの全国的に有名な病院で多様な専門医が取得可能
③義務勤務3~4年 木曽地域や大町地域など.2050年の首都圏の姿を先取りした医療圏で研修できるのは幸せである.離島勤務と同様、山間地や僻地勤務は研修医から願い出て修行に行くほどのところである.首都圏では機材やマンパワーが揃い、細分化された各種領域の専門医達になんでも質問できてしまうので自分で頭を使わなくなる.首都圏の方こそ研修に向かないと個人的には思っている.相澤病院で研修した若い先生と仕事をしたことがあるが非常に優秀で何度も助けてもらった.ここは筋金入りの北米型ERという初期鑑別診断システム(名ばかりの看板で実の伴わないところが多いがここは本物)を持つ日本でも数少ない病院の一つで若い先生の研修に最適.

⇒義務勤務地の選定は県と本人との協議の上決定なので豪雪地帯など気持ちの向かない土地への赴任には抗弁できる.

(10) 長野県は関東標準語圏内にあるから意思疎通に難渋するような方言はない.

(11) 新潟ほど大雪は降らない.温暖化で冬もそれほど寒くない.

(12)信州大学医学部医学科の各学年は毎年ほぼ首都圏難関校出身者で占められる。たまに地方のトップ校がいる。年齢層の多彩さは日本随一.人生経験の豊富な人から公私にわたって学ぶのは大きな糧になる.

(13)たかだか推薦入試の面接のために2日も学校を休みたくない場合(かつ、親に移動の手間をかけさせたくない場合):

①池袋発松本行の夜行バスあり.朝5時30分くらいに着く.駅前にはコンビニはもちろん、松屋(24h営業)とマック(朝6時開店)あり.徒歩でも45分ほどで会場へ.

②名古屋からは当日朝6時JR中津川始発の普通列車に乗ると朝8時15分に松本に着く.あとは受験会場までタクシーで15分.

③また前夜に京都駅まで戻って松本行き夜行バスに乗ってもよい.寒いからできるだけバスか建物の中に居たいものだ.

④大阪からも松本早朝到着の夜行バスあり.帰りは名古屋から新幹線.夜9時には帰宅.爆睡すれば翌日から日常生活へ.

⇒松本空港には新千歳空港や福岡空港から2時間かからないで来ることができる.なんと神戸からも飛んでいて僅か1時間の飛行で松本入りできる(事前予約ならば片道13,000円程度).松本がある中央高地エリアでは面接試験のある12月初旬は欠航になるほどの荒天は想定しにくい.

※今年は面接試験が金曜日なので乗鞍温泉や下諏訪温泉など源泉かけ流し温泉で一泊して帰って来れる

(14) 隠れた利点: 事前にいろいろと手間をかけて入念に調べる必要がなく志望理由書作成や面接が済んでしまい、あとは共通テスト一発合否判定なので、仮に不合格だった場合の落胆もそれほどではない.すぐに気を取り直して前期入試への勉強にとりかかることができる.

(15) 大学に限らず公金で運営されている組織は事後の失敗を恐れて従前の方針を変更することに及び腰であるものだ.そして今回、長年にわたる「県内高校生限定」という方針を変更した.つまりは「能力人柄に優れ、本県の医療に貢献しようという気概に溢れる人ならば全国津々浦々から分け隔てなく採用します」という大学からの強い意思表明がなされたと見る.長い間のしきたりを突然変更するということは世間にはそういうメッセージとして受け取られる.国公立大学医学部医学科の試験チャンスは年に数回しかない.信州大学のこの22名の全国枠に出願する学生の中には、大学から徒歩5分のところに住むご当地学生だけではなく、早くも試験の2日前に松本に向けて故郷を出発する北海道や沖縄の学生もまたきっといることだろう.ここで彼らに対するに、一切の情実に左右されぬ「公正平等」の精神に拠る以外に何があるだろうか?あとは信州大学の大河内清作教授を信じるしかない.

信州大学と新潟大学の学校推薦型選抜を狙っている(はずの)ライバル校(約200校)

(16) 新潟大学の場合、制度上、各校からそれぞれ最大数で20~30名を推薦可能.ゆえに実際上、全国上位校から10名くらいずつ受験してきてもおかしくない。上位校は共テ猛者の集団なので多くが9割をかなり上回る830点以上(2023共通テストの難易度と仮定)を難なく得点してしまうだろう.勢い、新潟大学は上位20校程度による県外枠切り取り放題の様相になる可能性大.だから中上位校の生徒は火中の栗を拾うよりもより高い合格確率を求めて信州大に注力するのが至極妥当ではなかろうか?以下に北海道から近畿地方までの偏差値上位校を書き出してみた.こうして一覧(200校以上ある)にしてみるとやっと全国募集枠の意味するところが身に染みてくる.さらに以下に記していない中国四国九州の進学校からも若干名が受験するだろう.


灘 開成 筑波大学附属駒場 筑波大学附属 お茶の水女子大学附属 東大寺学園 慶應女子 学芸大附属 神戸 早稲田本庄 慶應 慶應志木 慶應SFC 渋谷幕張 早稲田実業 早稲田 北野 大阪星光 膳所 西大和 市川 横浜翠嵐 大宮 豊島岡女子 天王寺 長田 浦和 栄東 江戸川取手 湘南 国立 東邦大東邦 千葉 船橋 四天王寺 智辯和歌山 洛南 山形東 水戸第一 浦和女子 ICU 八王子東 昭和学院 巣鴨 西 日比谷 明治 金沢泉丘 金沢大附属 東海 大阪教育大学附属天王寺 茨木 大手前 三国丘 関西大倉 清教 帝塚山 加古川東 桃山 仙台第二 土浦第一 開智 春日部 西武文理 土浦日本 宇都宮 立教新座 前橋 青学 柏陽 城北 専修松戸 東葛飾 東工大附 戸山 桐朋 立教池袋 旭丘 岡崎 岐阜 滝 四日市 大阪教育大学附属池田 高津 堀川 須磨学園 奈良 宝塚北 長田 兵庫 立命館守山 札幌光星 札幌北 札幌西 札幌南 青森 秋田 福島 川越東 高崎 作新学院 淑徳与野 国学院久我山 佐倉 千葉東 青山 立川 広尾学園 富山中部 藤島 甲府南 一宮 明和 静岡 向陽 生野 四條畷 豊中 西京 嵯峨野 近大附 清風 同志社 奈良学園 立命館 明星 西宮 八戸 山形東 茨城 春日部共栄 宇都宮女子 星野 市立浦和 学習院 錦城 芝浦柏 創価 木更津 薬園台 法政第二 本郷 明治中野 山手学院 刈谷 時習館 清水東 沼津東 浜松北 富士 瑞陵 大阪桐蔭 岸和田 四天王寺 小野 立命館慶祥 弘前 盛岡第一 仙台第一 山形南 西部学園 宇都宮短大附 大宮開成 川越女子 佐野日大 狭山ヶ丘 淑徳与野 八王子 学習院 川和 県立多摩 淑徳 専修大松戸 木更津 長生 市立千葉 中央杉並 中央大学附属 桐蔭学園 小山台 新宿 桐光学園 日大習志野 法政国際 明大中野 横浜サイエンスフロンティア 小松 富山 富山中部 大垣北 多治見北 磐田南 向陽 四日市 大阪教育大学附属平野 岸和田 関西大倉 京都教育大学附属 同志社国際 畝傍 明石北 小野 姫路西 立命館 京都女子


信州大学 令和6年度入学者選抜要項(本文9ページ目を参照)

新潟大学
令和6年度入学者選抜要項(本文24~25ページ目を参照)

その他

・蛇足だが、臨床医として働くのならば医師免許さえあればよい.正直、大学はどこでもよい.大学教授を目指すならばよくある格付けのとおりに生きればよい.医師免許取得後10年目くらいまでが非常に大切.大きな病院で初期研修をしたら次に医療資源の乏しい地域で後期研修するのも非常によい.今やSTARLINKを使えばどんな山奥でも上級医にコンサルでき、知識も常に最新なものにアップデートできる.何よりも医師不足地域を志向することは国策に叶うことである.勘違いしている人が多いが首都圏で研修すると有利ということは全くない.(医学部格付けとかいう昭和期の残滓については2018年4月30日の文春オンラインでの岩波明先生(昭和大学医学部教授・東京大学理科Ⅲ類卒)とジャーナリストの鳥集徹さんの対談を参照されたい.さらに日本医師会の最近の会長一覧も.旧帝大がそんなによいのなら初期研修や専門医研修で採用試験に合格しさえすれば親藩譜代だの外様だのの分け隔てなく受け入れてくれる.)  

・大学6年生の卒業試験に始まり国家試験に終わるあの重圧下のストイックな1年にくらべたら医学部受験などたいしたことない.またその後の専門医試験の方がさらに難しいと断言する先生もいる.

・敵を知り周到に準備した人にだけ運命は味方する.ご健闘を心よりお祈りする.


by 武蔵丸 医師(一般内科).外来と病棟管理で超多忙.職場が旧態依然の完全主治医制.他所で糖質制限中の高齢糖尿病患者がSUとDPP4併用で急性低血糖になりこちらに搬送されてくるような事態にも文句を言わず(言えず)対応.医師としての仕事以外に書類仕事が多すぎて辟易している.暇があればハリソンや論文の精読.まだ記憶力が衰えておらず理解吸収力があった若い頃にもっと意識しながら症候学を学んでおくべきだったと後悔している.もう一度生まれ変わっても医者をやると思う.子供が突如、私立医学部狙いに転向したので、このたびこの親子備忘録を加筆修正して公開.何かのお役に立てば幸いである.